Vol.3 月初3日の仕事の進め方
こちらの連載は、『自立支援のケアマネジメント実践例!達人ケアマネ』
2016年6月30日発行された内容です。
前々回(本誌Vol.11、 No.1)、 前回(本誌Vol.11、 No.2)でもお伝えしたことを毎回読むことに嫌気がさす方もいらっしゃると思いますが、大切なことなので何度も述べます。
地域包括ケアの具現化を目的として、何を効率化して、何を効率化してはいけないかを各事業所の価値観で考え、当事者意識を持って仕事に取り組んでいただきたいと思います。
まず私は、ケアマネジャーの評価は、介護報酬や給料などから勘案しても、低いと考えています。
そのため、報酬に見合った仕事をするというスタンスを取っています。
その中で大切なことは、書類作成ではなく、相談援助者として利用者、 家族、 事業者とのかかわりであり、そのことに重きを置いています。
書類は
「100%なければいけないもの」
という認識はありますが、
100点満点の書類を作成する前にやらなければならないことがある
と考えています。
私が目標とすることは、労働基準法の遵守と利用者全員分の書類が60点でも完全にあることです。
その上で、地域包括ケアシステムの具現化に向けて、ケアマネジャーが地域とどのようなかかわりを持つことができるかを考え、さらに時間があれ ば、70点、80点の書類を作成していけばよいという考え方です。
ですから、業務効率化についてこれから介護屋みらい(以下、当事業所)のやり方を紹介しますが、本稿を読む方の価値観で印象は大分変わってくると考えています。
モニタリング・仕事の段取り (表)
前回もお伝えしましたが、当事業所の最も大きな価値観とルールです。モニタリングを毎月22日までに終了することができないと、業務の効率化につまずいてしまうと考えています。
モニタリングは1日3件
当事業所では、1日3人のモニタリング訪問を基本としています。
月初からの訪問について賛否があることは理解していますが、前回も伝えたとおりダメな理由が一つもないため、当事業所では1日から訪問しています。
前回訪問時から今回訪問時までの間のモニタリングを実施するという感覚です。
ここで、ケアマネジャーの仕事がなぜたまるのかを考えてみます。
最大の理由は、その日の仕事がその日に終了しないことにあります。
なぜ、その日の仕事がその日に終了しないのでしょうか。
それはきちんと仕事をマネジメントしていないからです。
バランスの悪いモニタリングや仕事の組み立て方をしていると、その日の仕事はその日に終了しません。
では、どのようにすればその日の仕事がその日のうちに終了するのでしょうか。
答えは簡単です。
その日に終了する量しか仕事を組み込まないことです。
しかし、ケアマネジャーの仕事には予定外のことが起こります。
それは、前回も述べた横やりの仕事です。
時には3時間程度の時間を取られてし まう大きな緊急事態もありますし、15分程度の横やりが何回も起こることもあります。
そのため、 非常に時間が読みづらい仕事であると言えます。
ただ、その横やり仕事も平均すると1日あたり1 時間程度です。
初めからこの1時間も予定に組み込んでおけばよいのです。
このように考えると、モニタリング訪問を1日 6、7人行うのは、必然的に難しいという発想になります。
また、相談援助者がモニタリングに行く際、例えば10人のモニタリングを1日で行う予定となっていたら、私はおそらく朝1番の1人目から手抜きをすると思います。
残り9人の利用者のことを考えたら、1人目から全力で向き合える気がしないからです。
相談援助者として、適切な判断をし、真剣にかかわりを持つためにも、3人程度のモニタリングが最もバランスの取れた仕事量だと考えています。
1日の時間の使い方としては、午前中に2人、 午後に1人のモニタリングを行えば、当日の支援経過記録やモニタリング表を当日中に作成することは難しくありません。
なぜ書類がたまるのか
書類がたまる仕組みは、だいたいの方が同じだと考えています。
それは、モニタリングを終了しても、帰社後に机の上にメモなど他の仕事が置かれており、それを片づけるためにモニタリング表と支援経過記録の記載を後回しにしてしまうから です。
このことで「モニタリング表」と「支援経過記録」の2つの書類が溜まるのです。
ケアプランは本人、家族、事業所に交付しなければならないためたまることはありませんが、新規利用者のケアプラン作成にかかるサービス担当者会議の要点、ケアプラン変更時などのサービス担当者会議の要点がたまっていきます。
サービス担当者会議の要点に関しては、支援経過記録などが終了してからでないと先に進めない気分となり、支援経過 記録とモニタリング表がいつまでも終わらないため、どんどんとたまっていくのです。
モニタリングは、運営基準上でも、書面に起こして初めて終了する仕事です。
訪問して終了ではありません。
ちなみに私は、思い出すことが非常に苦手です。
1日前のことですら、思い出すのに時間がかかります。
思い出すという作業は、非常に時間を使用するため無駄だととらえています。
これにより、この無駄を省くという思考回路になります。
よって、モニタリングが終了して帰社したら、何よりも早く書類を完成させることにして
います。
ためて書類作成をすると、思い出す時間と考える時間が非常に増えます。
しかし、帰社後にすぐ書類作成すると、そのような作業は非常に短時間で済みます。
100%作成しなければならない書類であるため、最も効率的な時期に取りかかることが何よりも大切です。
月初3日間の仕事の段取り
仕事をしていく上で大切なことの一つに、目標を立てるということがあります。
例えば、月末にモニタリングに行ったとします。
その場合、当月中に当月分の仕事が終了しなくても当たり前のような感覚に陥りがちです。
また、月末分の仕事を翌月の給付管理前までに何とか終了しようという目標を立てますが、これは、明確な目標のようで明確ではありません。
当月中に当月分の仕事を終了するには、22日までモニタリングを終わらせるという目標を立てるのが最も大切です。
22日までにモニタリングが終了していれば、是が非でも当月中に当月分の書類を終了しようという思考回路になると思います。
実際に当事業所のケアマネジャーは、当月中に大半の書類作成を終了しています(残念ながらすべてのケアマネジャーが実施できているわけではありません)。
22日までにモニタリング終了とい うのは、目標達成のために一役買っています。
さらに、月初に行う実績の打ち込みのことを考え、モニタリングの予定を組む必要があります。
次に、1~3日のモニタリング予定の組み方と実績の打ち込みの段取りを説明します。
■1日
3人のモニタリング、支援経過記録やモニタリング表の記載、実績の打ち込みを行います。
実績の打ち込み方は後述しますが、当日に来た実績は当日中に処理をすることが大切です。
1日に実績を持参していただくのは福祉用具貸与や通所介護が多いです。
福祉用具貸与や通所介護の実績入力は簡単なことが多いですが、初日は数多くの実績が集まります。
そのためモニタリン グに関しては、事業所の近所に住み、あまり長居を好まない利用者3人のモニタリングを行うことを当事業所のケアマネジャーには勧めています。
つまり、1日の仕事は、モニタリング3人と実績を打ち込むことです。
■2日
2日は、長居を好まない利用者と普通のモニタリングを好む利用者の3人と、実績入力を行いま す。
2日は、1日に来なかった通所介護やその他の事業所は2日に持ってきてくれます。
また、少し早めに実績を持参してくれる訪問介護もあります。最も手間のかかる訪問介護の実績は、まだ来ない状態だと思います。
■3日
3日は、普通の利用者のモニタリング3人と実績の打ち込みを行います。
この日には、ほとんどの実績入力が終了していて、少し遅い事業所と訪問介護の事業所が残っている状態です。
35人の利用者とかかわりを持っていたとしても、10人程度しか残っていない状態もしくは、残っていても最後の事業所が来れば終了してしまう状態です。
このように、月初の1~3日の業務は、9人のモニタリングの終了と実績入力の大半を終了することが大切です。
■実績の打ち込みの段取り
資料に、平成28年6月3日までに実績入力が終了した経過を示します。
実績は、もらってから入力するまでが一つの仕事と考えます。この一つの仕事をためないことが非常に重要です。
私が最も無駄だと思う実績入力は、利用者ごとに実績を分けて(仕分け)から全員をまとめ打ち込むという方法です。
これは非常に効率が悪く、チェックが甘くなりがちです。
一見まとめて打ち込む方が効率的だと考えがちですが、一つひとつの仕事を大量にため込んでおり、 また、仕分けの作業(後述)に時間を費やしてし まうことが多いため、知らず知らずのうちに無駄な動きをしています。
入力は一度にまとめて行うため1回しかチェックしません。届いた実績はとにかく打ち込むことです。
実績入力の流れ(図)
ここでは実績入力の流れについて説明します。
これは、私のやり方であり、事務所として統一されていませんが、当事務所の多くのケアマネジャーは同様のやり方をしています。
■仕分け
実績と報告書と頭紙などに仕分けします(写真 1)。
頭紙はすぐにシュレッダーにかけて処分し、 実績のみの状態にしましょう。
報告書の取り扱いについては後述します。実績は、アイウエオ順な どに並べ替えずに、届いた順番どおりに重ねます。
■実績の打ち込み
届いたものからドンドン実績を入力しましょう (写真2)。
1事業所の支援しか受けていない利用者の実績の打ち込みが完了したら、実績報告書を個別ファイルに保管しましょう。
2事業所以上の支援を利用していても、届いた実績から打ち込みます。
例えば3事業所を利用していて、2事業所分の実績を入力し、残り1事業所の実績入力が残っている場合は、利用者ごとにクリップでとめます (写真3)。
入力済みの実績は、1事業所入力済みと複数事業所入力済みに分けて(写真4) 保管ボックスに入れておきます。
■保管ボックスの使い方
ここでは、保管ボックスの使い方を説明します。
なお、保管ボックスは2つ並べて置き、左側を複数事業所入力済み、右側を1事業所入力済みの実績を入れるものとします。
【利用者Aさん】
①2事業所の支援を利用している。
②1事業所目の実績が届いた。
③1事業所目の実績入力が完了したら、保管ボックスの右側に保管する。
複数事業所入力済み | 1事業所入力済み Aさん実績 |
④2事業所目の実績が届いた場合は、保管ボックスの右側からAさんの入力済み実績を探す。
⑤2事業所目の実績入力が完了したら、個別ファイルへ保管する。
複数事業所入力済み | 1事業所入力済みAさん実績 → 個別ファイル |
【利用者B】
①3事業所の支援を利用している。
②1事業所の実績入力は完了している。
③2事業所目の実績が届いた場合は、保管ボックスの右側からCさんの入力済み実績を探す。
④2事業所目の実績入力が完了したら、1事業所目と2事業所目の実績をクリップでとめて保管ボックスの左側に保管する。
複数事業所入力済み | 1事業所入力済み Bさん実績(入力後、左へ移動) |
⑤3事業所目の実績が届いた場合は、保管ボックスの左側の中からBさんの入力済み実績を探す。
⑥3事業所目の実績入力が完了したら、個別ファイルへ保管する。
複数事業所入力済み Bさん実績 → 個別ファイル | 1事業所入力済み |
ここでのポイントは、仕事をためないという観点から、来た実績はすぐに打ち込むことです。
また、実績は個別ファイルにしまわない方も多いと聞きますが、これも個人情報であるため、個別ファイルにしまうことをお勧めします。
そして、 入力が完了したものから個別ファイルに保管すれば、実績の量が減っていくため、管理しやすくなります。
毎月1日にどれだけの実績が来て、どの事業所やどの事業体が、どのタイミングで実績を持ってくるかを知ることが大切です。
これにより、月初3日の実績入力にどれだけ時間がかかるかマネジメントすることができます。
事業所からの報告書
この時期に時間を取られがちなことがもう一つあります。
それは事業所からいただく報告書です。
利用者の1カ月の様子が記載された書面を実績と共にいただくことが多いですが、この取り扱い方一つ取っても、時間の使い方に違いが出ます。
1~3日の間に、多くの事業所が実績とモニタリング表を持参してくれますが、これを35人分目をその場で通して、すべての情報を把握できるかと問われたら、私にはできません。
これは至難の業です。その場ですぐに読み込むことは、非常に効率が悪いです。
大切なのは、その場で目を通さなくてよい状態をつくることです。
当事業所のルールの一つに、サービス提供表は25日までに配付というものがあります。
時間が許す限り手配り配付をしています。
なぜ手配り配付かというと、第一に利用者・家族を最も近くで支えているのはケアマネジャーではなく、事業所だと考えているからです。
ケアマネジャーがケアマネジャーとして仕事ができるのは、事業所の支援があるからです。
事業所の存在がなければ、我々はただの話を聞いてくれる、よい人に過ぎません。
第二に、利用者・家族を支えている事業所に感謝を示すためです。
そこから人間関係が生まれると考えています。
そのため、できる限り手配りでサービス提供表を配り、感謝の意を示し、事業所から今月の状況などの報告を受ける。
これにより、 月初にいただく報告書はその場で読まなくてもよい状態が出来上がります。
この報告書には、緊急事態が記載されていることはありませんから、すぐに熟読する必要はありません。
ですから、私はサービス利用表の配付時に持っていき、玄関前などで読み込んで頭に情報を入れてモニタリング訪問をしています。
これにより、多くの時間削減と情報を生かすことができると考えています。
月初は非常に忙しい時期ですが、事前に段取りをし、与えられた仕事をこなせるような状況をいかにつくるかが、仕事をマネジメントする上では大切です。