Vol.2 業務効率化のテクニック
こちらの連載は、『自立支援のケアマネジメント実践例!達人ケアマネ』
2016年6月30日発行された内容です。
第1回(本誌Vol.11、 No.1)でもお伝えしましたが、本連載を進めるに当たって非常に大切なこことになりますので、毎回記載させていただきます。
ケアマネジャーには、業務の効率化という観点 をしっかり持っていただきたいと思います。業務 を効率化することで、相談援助者として何が大切 かを見極め、どこに自分の時間を使用するかを、 真剣に考えていただきたいのです。
これは人の価値観なので、押し付けるつもりは全くありませんが、「介護屋みらい」(以下、当事業所)という組織と「ケアマネジャーを紡ぐ会」という組織では、
最も大切なものは、相談援助者として利用者・家族とその方々を支えてくださる事業所との人間関係構築や信頼関係構築の時間であると考えています。
さらに、地域とのかかわりをもっと積極的に 持つことで、地域包括ケアの具現化にケアマネジャーが動くことができるようになることも大切だと私は考えています。
その中で、書類作成が業務効率化の大きな壁として立ちはだかっているのです。そのような現状でケアマネジャーに支払われる介護報酬が適切なのか不適切なのかを考えた場合、私は介護報酬は不適切であると判断しています。
報酬をいただいて働くプロフェッショナルとして、介護報酬に合わせた仕事の仕方を考えた時に、 書類作成を簡素化し、相談援助者として使う時間を増やし、利用者や家族などのために充てたいと考えています。
ですから、今回は当事業所の業務効率化の手法を紹介させていただきますが、読者の価値観で印象は大分変わってくると考えています。
モニタリングは22日までに終了しよう
ケアマネジャーが行うモニタリングの根拠となるのは、運営基準第13条13号と14号にあると考えています。それぞれの法文について見ていきたいと思います。
13号
介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成 後、居宅サービス計画の実施状況の把握(利 用者についての継続的なアセスメントを含む。) を行い、必要に応じて居宅サービス計画の変 更、指定居宅サービス事業所等との連絡調整 その他の便宜の提供を行うものとする。
14号
介護支援専門員は、前号に規定する実施状況の把握(以下「モニタリング」という。)に 当たっては、利用者及びその家族、指定居宅 サービス事業者等との連携を継続的に行うこととし、特段の事情のない限り、次に定めるところにより行わなければならない。
イ 少なくとも1月に1回、利用者の居宅を訪問し、利用者に面接すること。
口 少なくとも1月に1回、モニタリングの結果を記録すること。
これを私なりに要約すると、
「ケアマネジャーが立てたケアプラン(介護保険などでの支援や目標に向かっているか)がしっかりと機能しているかのチェックと本人・家族の状況や状態の把握のために、月に1回の訪問をしてください」
という内容だと認識しています。
これは、当事業所の最も重要な価値観とルールです。モニタリングを毎月22日までに終了する。 これができないと、業務の効率化がつまずいてしまうと考えています。
ここで、賛否が分かれることが一つあります。 月初からのモニタリングについてです。「1日から訪問してよいのですか」という問い合わせを非常によくいただきますが、
1日から訪問してはいけないというルールが私には見当たりません。
ですので、当事業所では1日からモニタリングを実施しています。当事業所の1カ月のモニタリングの予定表を表1に示します。
翌月分の利用表を1日から提出するのは 利用者・家族にとって大変ではないか?
私は利用者・家族との契約時にケアマネジャーの仕事について次のように説明します。
介護保険を利用するに当たって非常に大切なルールがあります。
それは、最低月に1回はご自 宅に訪問させていただき、ご本人様やご家族様と面談をさせていただくことです。
そこでは、今の支援で大丈夫かどうかの判断や、皆さんの状況を確認し、支援内容の変更や相談などお話しさせていただきます。
介護保険にはいくつかルールがあって、この毎月1回の訪問ができない場合は、支援の中止やケアマネジャー事業所の変更もありますので、ご協力とご理解をお願いします。
では、訪問日ですが、これは事業所によって考え方に違いがあるのですが、当事業所では、月の頭から中旬くらいまでに訪問させていただきます。
訪問に際し、利用表と言われる予定表のようなもので、次月の予定を確認させていただきます。
ケアマネジャーは35人程度のご利用者様とかかわりを持たせていただいており、皆さんのご自宅を訪問して、前回の訪問から今回の訪問までの間に何があったかとか、来月はこのままの支援でよいかとか、いろいろな話をさせていただいて、全員分の予定を月の中旬までに集めます。
今度はそれを、皆さんのことを実際に支援してくださる事業所に、 提供表といった形で中旬から月末までに配付いたします。
ですから、訪問は月初から中旬になりま す。1カ月先のことを考えるのはなかなか難しいかもしれませんが、協力していただけるとありがたいです。
さらに、今後ショートステイを利用される場合は、近辺のショートステイでは2ヵ月前の予約となっています。
例えば、1月にショートステイを利用したい場合は、11月1日に申し込みとなるので、今から少しでも先の予定を立てる練習と思っていただけるとありがたいです。
このような内容を契約時に説明し、理解を求めています。
当月のモニタリングは当月分の モニタリングをするのではないか?
運営基準上、月に1回の訪問と記録は義務付けられていますが、当月分のモニタリングをしなさいといった内容はどこにも記載されていません。
当事業所としては、「前回訪問から今回訪問の間をモニタリングし記録に残す。さらに次月に向けて調整を行う」と解釈しています。
よって、1日からの訪問を推奨しています。
また、1~22日の訪問によって得られるメリッ ト(次回以降に紹介)が非常に多いので、このようなモニタリング方法となっています。
ケアマネジャー業務がたまる要因
ケアマネジャーの仕事がたまる要因は極めて簡単です。その日の仕事をその日に終了させないことが原因です。こんなに簡単な答えはありません。 その日の仕事がその日に終了すれば、仕事はたまらないのです。
では、なぜケアマネジャーはこの極めて単純明快なことができないのでしょうか。それには、外的要因と内的要因があります。
外的要因としては、ケアマネジャーの仕事は何かと横やりが多い仕事であることです。
例えば、 利用者からの急なプラン変更の依頼や、所属法人からのケアマネジメント以外の仕事の割り振りなどがあります。併設されている訪問介護事業所の登録ヘルパーがわざわざケアマネジャーのところに来て、報告なのか愚痴なのか、とりとめのない話に30分付き合わされるなど、さまざまなことで時間を取られることがあるかもしれません。ほかにも急な会議が入ったり研修が入ったりと、業務を妨げる事象があります(ここでいう業務は、その日に終了させる仕事のこと)。
内的要因としては、そもそも仕事をマネジメントできていないことです。
例えば、月末に訪問を行うケアマネジャーは、本当に31日や30日にモニタリングを終了できるのでしょうか。28日に自身が病で倒れたとしたら、その際のリスクマネジメントができているか疑問に感じます。保険者によって解釈が変わりそうですが、予定にないケアマネジャーのやむを得ない事情により訪問ができなくなったため、同じ事業所に所属する代わりのケアマネジャーが一定の要件をクリアし、モニタリング訪問を行えば運営基準減算は免れる可能性があります。しかし、月に1回訪問して信頼関係を構築する機会が1回分減ることになります。
何が言いたいかというと、ギリギリで仕事をすることはリスクがあるので、必ず余裕を持って予定を立てるということです。仕事のマネジメントとしては、外的要因も仕事の一部ととらえて、その時間も1時間程度入れておくことが大切です。 しかし、1日の自身の仕事を組み立てるマネジメ ント力が著しく欠けているケアマネジャーも中にいます。
外的要因と内的要因をきちんと理解し、段取りよく仕事をマネジメントすることが非常に大切だと考えています。
では次に、どのように仕事をマネジメントしていくかについて説明します。
仕事の見える化
ケアマネジャーの仕事は「大変」「ケアマネジャー 業務以外のこともやらされる」「書類は何を作って何を作っていないか分からない」「とにかく忙しい」など、はっきりと自身のやらなければならないことやできているところを含めて見える化されておらず、イメージで仕事をしている方もいます。
イメージで仕事をしてよい場合といけない場合がありますが、仕事の見える化においては、イメージで仕事をすることは控えた方がよいと考えています。
例えば、利用者AさんからZさんまでの書類で誰の何が終了していて何が終了していないかを実地指導の前に慌てて把握するのではなく、常時把握する体制を整えることをお勧めします。
当事業所では、各ケアマネジャーが毎月26日前後に進捗状況確認表(表2)を提出しています。 この表は、各ケアマネジャーの書類の状況把握を行う書類です。加えて、ケアマネジャー個人としては、自身の書類作成能力(スピード)を把握するものとなります。ケアマネジャーが作成しなければならない書類は、大まかにこの表に記載されているものが挙げられます。
ここで重要なのは、仕事をきちんと見える化することです。例えば、自身がモニタリングについて記載する時に何分かかるかを理解していなければ、自身の仕事のマネジメントはできません。
なぜなら、ここでいうマネジメントとは、時間の使い方になるからです。加えて、ケアマネジャーの仕事は横やりの多い仕事であることは皆さん身をもって体感していると思います。
そのため、自身が何に何分時間がかかって、何の書類ができていないかなどをきちんと把握しておく必要があるのです。
また、常時仕事を見える化していないと、仕事を組み立てる時に書類作成の進捗も分からない状態では、先が見えない恐怖のトンネルに入るようなものです。
見えないからいつの間にかたまってしまう、しかし、見えればためないように努力をします。
さらに、たまっている時はたまっているなりのスピード感を持って仕事をすると思います。 施設で介護職をした経験がある方や、外食産業でアルバイトをした経験がある方なら、非常に分かりやすいと思います。忙しい時は忙しいなりのスピードがあるのです。
プライオリティーをしっかりつけよう
ケアマネジャーの仕事は、プライオリティーがはっきりしているようでしていません。プライオリティーが高い仕事は、緊急性の高い仕事が多く、いわゆる横やりの仕事になると思います。
しかし、多くのケアマネジャーは、プライオリティーの高い緊急の仕事への対処は万全ですが、たまってし まった書類に関してのプライオリティーはついていないと感じることがあります。
その中でも、ケアマネジャーがため込まない書類があります。
それはケアプランです。
これはためるわけにはいかない書類ですし、支援開始のために最も重要なものなので、多くのケアマネジャーは、ケアプランをため込むことはありません。
しかし、ケアマネジャーの書類量は多く、フェースシート作成から始まって多くの書類を作成します。
これらの書類のどれから手を付ければよいか悩んでいる方も多いと思いますが、仕事を見える化したら、簡単に終了できる書類からどんどん終了させてください。細かい作業はいつでもできると考えがちですが、細かい作業がたまっていくと非常にストレスになります。
細かい作業こそ常時手元に置かず、片付けていくことを目指した方がよいと考えます。
まとめ
仕事がたまっていく理由は、明確な目標がないからです。
先述したように、その日の仕事をその日に終了することができれば、書類がたまることはありません。
それができないことが問題なのです。
その問題の解決方法の一つとして、余裕を持って予定を立てることが大切であると説明しました。
22日までにモニタリングを完了させることは、余裕という概念を持つためにも大変重要な本事業所のルールです。
このルールを基本に、仕事を見える化していくことで仕事の効率化を図ります。
次回以降も、本事業所の仕事の進め方を説明していきます。